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著者 : 三四郎
| 撮影 : Vito Cruz |
第三回 日本人がフィリピンに填まる理由 |
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マニラの現地日系旅行代理店の社長に言わせると、フィリピン航空に限らず、JALもNWも成田−マニラ路線は「生活路線」なのだそうだ。
今年は香港でSARS騒ぎがあり、イラク戦争が勃発し、巷の航空路線はガラガラ。JALもANAも巨額の赤字を計上している。しかし、成田−マニラ路線の予約はいつも一杯なのである。その理由は皆さんがご存知の通り。「生活路線」というのはビジネス絡みの旅客だけでなく、総数20万人とも言われる在日フィリピン人コミュニティやフィリピン人と日本人が結婚した日比カップルの旅客が大きな割合を占めているためと考えられる。
成田空港の搭乗待合室では、6ヶ月の契約期間を終え、お土産を抱えたタレントさんたちが故郷に帰るのを待っている。その横には、熾烈な競争を勝ち抜いた熱心なお客さんたちが、同伴帰国でいそいそと付き従っている。そして、既に日本人と結婚をした若いお母さん達が小さな子供を抱え、年に一度の里帰り。日本での結婚生活で磨きがかかった日本語で、子供達をあやしている。
一方、日系メーカーの進出など、フィリピンにおける日本企業の影響力はヒト・モノ・カネのすべてにおいて、成長が止まっている。もしくは少し縮小気味なのだ。簡単なバロメーターとしてマニラ日本人学校の生徒数が挙げられる。数年前の500人をピークに徐々に減ってきており、今年度は急激な減り方をしている。
日系企業のコスト削減策により、学齢期の子供を抱えて経費がかかる中堅社員を日本に帰国させ、結婚前あるいは子供のいない若手社員に駐在員を置き換えている。また、フィリピンは中国やタイに外資企業誘致競争で負けているのも明らかである。詳しい理由に付いては、幸福論に関係しないので、ここでは述べないが。
このような日系企業のビジネス絡みの需要を補うかのように、日比間の生活に即した交流が年々影響力を増しているのである。日比間の旅客だけでなく、国際電話も年々成長している。日本から海外への国別国際電話利用料でフィリピンは堂々の第4位。携帯電話に至っては、第1位である。ドコモだけで年間100億円の売上があるという。
日比国際結婚は年間5千組を超え、年々日本でのフィリピン人コミュニティーは拡大していく。日本人男性の晩婚化解消策の切り札かのように、フィリピン人タレントのお店は開店し、夜毎出会いの花が咲く。どうしてこんなに日本人男性とフィリピ−ナは相性がよいのだろうか?前振りが長かったが、今月からの幸福論のテーマは「日本人がフィリピンに填まる理由」である。
かくいう私もフィリピンに填まった一人である。約8年前、私が大学生だった頃、突然両親がリタイアメント(第二の人生を送る退職者)と称して、フィリピンに移住したのである。学問をおろそかにして暇だった私は、初めの3年間に30回もフィリピンに通った。海外は欧米、香港や台湾といろいろ見知っていたが、初めての東南アジア…、填まったのだ。
時は1995年、バブル不況の真っ只中。先の見えない日本にいると、すべてが灰色に見えた。タイ航空に乗って関空からNAIAに飛び立つ。飛行機が雲の中、徐々に高度を下げて窓からマニラの木々の緑が見えると、いつも私の心は沸き立った。
むっとした湿度の高い中、タラップを踏みしめる。ココナッツオイル特有のにおいを含む生暖かい空気を吸い込み、足早に入管と税関を通り抜け、出発階に駆け上り、客を降ろした流しのタクシーに飛び乗る。灰色の日本と違って、マニラの街並みや人々は極彩色のフルカラーに見えた。当時はそう見えたのだ。8年経った今、それは光線の強さのせいだったと判ったけれど。
空港からスーカットロードの小汚い街並みを眺めながら、タクシーの運転手をタガログ語で牽制しつつ、約15分で懐かしの我が家。背中を流れる汗を心地よく感じながら、駆け付け一本のサンミゲルビール。この幸せは読者の皆さんもいつも感じているに違いない。
見るもの聞くものがすべて物珍しく、貧富の格差に戸惑いながらも親しんでいったフィリピン。夜な夜な悪友とネオン街に繰り出し、カラオケを梯子しているうちに、エアーポケットのように填まってしまったピーナとの恋。
彼女と付き合い始めて、それまでの滞在では知りえなかった世界があることを知った。フィリピン人の世界。ローカルの世界と言ってもいいかもしれない。今まで使っていたお金の数分の一で、二人の行動が賄え、数倍も心が躍る経験が出来た。そのうちの一つが、「踊り狂う人々」で紹介したライブハウスだった。あるいは地方を旅行することだった。何も守る物は無く、身一つで飛び込んでくるような彼女を通してフィリピン人の考え方を知り、彼らの気持ちを知った。
次号で本格的に日本人がフィリピンに填まる理由を解析!
ご期待あれ!!■
第4回 〜戦士と乙女〜に続く!
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